症状から見た耳の病気
症状からみた耳の病気
耳が痛い
耳の構造を考えた場合、耳の触りすぎや耳垢に伴う外耳道の炎症、あるいは鼓膜や中耳の急性炎症を、まず初めに考えなければなりません。これらの所見を、当院では硬性鏡でお見せします。
次に考えなければならないのが、低い音が聞こえにくくなる病態においても、耳が痛いと感じる場合があります。これは、疲れ、ストレス、睡眠不足等によって、身体の抵抗力が低下して、ヘルペスウイルスの再活性化が起こり低音域の聞こえに影響を与えるからではないかと考えられています。従って、この病態を鑑別するため、当院では、外耳道、鼓膜に異常所見を認めない場合には、聴力検査をして、この病気を鑑別させて頂きます。その結果を拝見させて頂き、治療を開始します。
もう一つが、首肩こりです。これは、頬から首・肩にかけて触診し圧痛が有るかどうか、トリガーポイントの有無によって判断します。これは、頬から首・肩の筋肉の慢性的な炎症による痛みが、耳の周囲に痛み刺激を放散することが原因です。この病態を鑑別するため、当院では、耳が痛いという主訴の場合に、頬から首・肩にかけて触診を行います。その結果で、内服治療とストレッチ指導を行います。
耳が詰まる
この症状は、1で述べた「耳の痛み」の延長線上にある症状です。従って、まずは、外耳道、鼓膜、中耳の疾患を疑い、硬性鏡で耳を確認します。ここで、注意が必要なのは、痛くない中耳炎である滲出性中耳炎、鼓膜に穴が空いている慢性中耳炎、慢性中耳炎が進んだ状態である真珠腫性中耳炎という中耳の疾患です。耳の疾患に気づき憎いのは、これらの中耳疾患は、症状がゆっくり進行し、かつ片側の耳が正常に聞こえているため、気付きにくいことが、理由として考えられます。滲出性中耳炎の場合、まずは抗生物質の投与で経過を見ます。難治性と判断した場合、鼓膜切開、鼓膜チューブ挿入術を行います。慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎と診断した場合、手術が必要と判断した場合には、手術可能な姿勢を紹介させて頂きます。
前述した低い音が聞こえにくくなる難聴の場合も、耳が詰まるという症状を訴える場合があります。この疾患の鑑別のために聴力検査を行います。その結果を拝見させて頂き、治療を開始します。
また、首肩こりが原因でも、同様に耳が詰まるという症状を訴える場合があります。人間は、「耳が痛い」という感覚が慢性化すると「耳が詰まる」という感覚を感じるようになるようです。前述したように、この病態を鑑別するため、当院では、耳が詰まるという主訴の場合にも、頬から首・肩にかけて触診を行います。その結果で、内服治療とストレッチ指導を行います。
急に耳が聞こえなくなった
この症状がある場合は、突発性難聴あるいはメニエール病の発作の発症が考えられます。ここで、大切なことは、1−2週間以内に耳鼻咽喉科を受診し、一日も早く治療をすることです。発症後、2週間を超えると、治療効果が極端に低くなることが臨床検討から分かっています。これは、発症から時間が経過してしまうと、内耳有毛細胞の脱落が起こり、どんな治療を行っても、一度脱落した有毛細胞は、再生しないためと推察します。当院では、突発性難聴を疑う場合とメニエール病の急性発作を疑う場合にはプレドニンという副腎皮質ステロイド系の薬剤を少しずつ減量していく内服治療を行います。もし、この治療の効果が無い場合には、鼓室内にプレドニンを直接注入する治療(ステロイド鼓室内注入法)を計4回施行します。メニエール病の場合、聴力低下が低音域に限局する場合には、内リンパ水腫(内耳の浮腫)を改善する目的のため、内服治療を行います。
耳鳴りがする
耳鳴りは、まず、「キーン」という高音域の耳鳴り、「ジー」、「ブー」などの中音域の耳鳴り、「ゴー」という低音域の耳鳴りの中で、どのような音色なのかが大切です。これらが混ざり数種類の耳鳴りがする場合も考えられます。これらの耳鳴りは、難聴がある場合には、左右の聴力バランスの違い、高周波、中周波、低周波の各音域の難聴の程度と、周波数帯のバランスの違いによって、耳鳴りの大きさや音色は、大きく影響を受けます。
年齢の変化に伴って起こる加齢性難聴は、高周波の音域が聞こえにくくなります。この場合、耳鳴りはキーンという高周波の耳鳴りがする場合が多いと思います。これは、高周波音域の低下に伴う音のエネルギー不足と高低の聴力バランスの違いを脳が認識して、脳が余分なエネルギーを使うために、脳が過剰に興奮することが、一つの原因です。もう一つの原因は、高音域を認識する音の受容器である内耳の有毛細胞が脱落するため、音を脳に伝える聴神経が、音の入力不足を認識し、過剰興奮することも原因と考えます。このように、正常聴力を持つ人の内耳有毛細胞は、高周波、中周波、低周波音域の音をバランス良く認識し、脳に音を伝えるのですが、音の入力バランスが崩れると、中枢である脳と末梢の聴神経とが、過剰に興奮して、余分なエネルギーを使うことが、耳鳴りの原因と考えています。
一方、メニエール病や低音障害型感音難聴の場合には、低音域が聞こえにくくなります。この場合には、「ゴー」という低音の耳鳴りと高音の「キーン」という耳鳴りがする場合があります。これは、先程の考え方を適応すると、低周波音域の音のエネルギー不足と高低バランス障害が、脳と聴神経を過剰興奮させ、低音の耳鳴りを発症させると考えます。しかし、これらの疾患の患者さんの中には、「キーン」とう耳鳴りを訴える場合があります。これは、低音が聞こえにくいことイコール高い音が聞こえすぎることを意味します。これは、日本語の性質にも原因があります。日本語は本来、低い周波数を中心にした言語で、言語学的に珍しい言語と言われています。要は、日本人の意識は、常に低い周波数に向いています。その意識のバランスが難聴になることによって崩れ、突然、高音域が過剰に聞こえるようになり、聴覚過敏の状態になるため、「キーン」という耳鳴りを意識する場合があるのです。
難聴が無い耳鳴りもあります。これは、二つ理由が考えられます。疲れ、ストレス、睡眠不足によって、脳が過剰に興奮して、音に極めて過敏な状態(聴覚過敏)になるため、「キーン」という耳鳴りを意識する場合があります。次が、首肩のこりです。これは、前述したように、耳が痛い・詰まるという症状の原因でもあります。頬部から頚部の慢性的な深部の痛み(圧痛)は、脳の過剰な興奮や聴神経の過敏反応を作り出し、耳鳴りの原因にもなるのです。
女性・男性の更年期障害が原因となる女性・男性のホルモンバランスの乱れも、耳鳴りの原因になります。女性の場合はエストロゲン、男性の場合はアンドロゲン(テストステロン)の急速な低下は、早い方は30歳代から起こり、自律神経の乱れ、血管機能の低下、脳の機能低下も引き起こします。その結果、多様な症状の一つとして、耳鳴りも出現します。
これらの耳鳴りの原因を理解することが、耳鳴り治療をしていく上で、一番のポイントになります。当院の耳鳴り治療法については、自由診療の項で詳しくお話しします。
