症状から見ためまい
症状から見ためまい
体動時に起こるふわふわめまい
- 良性発作性頭位めまい症(BPPV)
この主訴の場合、一番多い疾患は、良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。この疾患は、正常であれば内耳の一部分(卵形嚢と球形嚢)に収まっているカルシウムの粒(耳石)が、加速度を感知する三半規管に紛れ込む病気です。この病気は、何らかの原因で以前に頭を強く打った、同じ方向ばかり向いて寝る習慣があるなど、身体に物理的な刺激が加わった場合に、発症することが、ほとんどです。また、めまいが起こり始めた当初は、ぐるぐるする(回転性)めまいですが、時間が経つとふらふらする(非回転性)めまいへ症状が変わってきます。BPPVは、頭位・頭位変換眼振検査時に、特徴的な眼振が出ます。これは、耳石が三半規管の中に紛れ込み、起き上がる、頭の位置を変えるなどの動作の際に、三半規管に異常なリンパ対流を起こすためです。症状は、繰り返しますが、数秒間から数分間で治まります。この疾患は、他の病気を伴わないシンプルな耳鼻科疾患であることも特徴です。
- 持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
次に、最近注目されている疾患が、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)です。この疾患は、3ヶ月以上続く慢性化したふわふわ(浮動性)めまい症といわれた症例の約40%を占めると言われています。特徴的なめまい悪化要因が、起き上がる、歩くなどの能動的動作、エスカレーターに乗るなどの受動的動作、複雑な模様や商品の陳列棚などを見る静的視覚刺激、人混みの中で行き交う人を見るなどの動的視覚刺激が加わる場合です。これらは、体性感覚過敏、視覚過敏が原因と考えられています。40歳代の女性に多いのも特徴です。
- 自律神経失調症(起立性調節障害、更年期障害、椎骨脳底動脈循環不全)
次に、自律神経機能不全が原因となり、立ち上がるなどの体位変動を代償する調節機構が破綻してしまうため、体動時の血圧変動や脳血流低下を引き起こし、ふわふわめまいを始めとして、たちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛などのさまざまな症状を引き起こす起立性調節障害という病気です。二次性徴がはじまる思春期の場合は、自律神経の発育が未成熟なために引き起こされる自律神経機能不全の一つです。20−30代のミレニアム世代では、ストレスや疲労、中年期以降に起こる更年期障害の場合は、女性・男性ホルモンバランスの乱れが、自律神経機能を低下させるため、体動時にふわふわめまいを引き起こします。高齢者の場合には、老化に伴う自律神経機能低下、血管の老化に伴う血圧調節障害や椎骨脳底動脈を中心とする循環不全が原因となり、体動時にふわふわめまいが起こります。従って、高齢者の方が、ふわふわめまいを主訴とする場合には、頭部MRIを撮影し、脳の老化の程度を確認するべきと思います。
- 前庭性片頭痛
片頭痛にめまいを伴う場合には、前庭性片頭痛を考えます。片頭痛は、嘔気嘔吐を伴い、体動時に悪化、光や音、匂いでも悪化することを特徴としています。体動時にふわふわするめまい以外にも、自分が回っている、周囲が回っている、流れるなど様々な訴えが有るのが特徴です。めまい症状は、数分のものが繰り返し続いても、長くても3日くらいで症状は収まります。
- 脊椎間狭窄症、側湾症、股関節症
起立時、歩行時にふらふら・ふわふわめまいを訴える場合には、整形外科的要因も考慮するべきです。これらの疾患が原因となり、神経の圧迫、筋力低下が、ふらつきを誘発し、慢性的な姿勢のバランス障害がPPPDを誘発する可能性も考えています。
突然起こるぐるぐるめまい
- 前庭神経炎
突然発症した難聴、耳鳴り、耳閉感を伴わないぐるぐる(回転性)めまいは、前庭神経炎を疑います。
- 突発性難聴、メニエール病
突然発症した難聴を伴うぐるぐる(回転性)めまいは、突発性難聴に伴うめまい、あるいはメニエール病の急性発作を疑います。突発性難聴は、原則一回のみ起こります。メニエール病の場合は、繰り返すことを特徴としています。また、頭痛を合併することが多いです。